2014年2月13日

第356巻 「水彩画入門」


第356巻 「水彩画入門」
不破 章著 1976年刊行

絵画制作の基本を学ぶために不可欠な水彩画は、作品としてもその上品で透明感のある世界は根強い人気があります。著者は水彩画の指導者の少なさを嘆き、学びたい人は独学でも充分という信念のもと、この親切丁寧な入門書を書きました。


各章で述べられている制作の技法や勉強の仕方も大変興味深いのですが、書中に紹介されている、著者不破先生と、師である石井柏亭氏の作品の素晴らしさは、鑑賞だけでも十分に楽しめます。



「何を描くにしてもデッサンは必要なのですが、人物となると一層目が肥えていなくてはいけません。人体にはいささかも妥協を許さない人体構成、すなわち約束があります」淡い色彩と柔かな線が美しく意志のある表情を持つ女性にぴったりの表現方法です。



「この絵は五十年四月十五日の作。雲一つない小春日和です。田一面のの雪はどんどん溶けて所所に畦らしい形と、水溜りの暗い色が点々として模様を作っています。左端に鎮守の杉森と鳥居、山脈の手前に上越線の鉄路が一段高く走っております。それが北国の旅情をそそるのです」
厳しい稜線とのどかな里山の雪景色、自然はときに優しく、ときに厳しい、そんなひとコマを切り取ったような作品です。




「剣崎は三浦半島の突端にあって、その灯台は東京港の入口西側に位し、高い断崖上にあります。太平洋側には、白い絶壁と無数の洞穴荒波に洗われております」「秋も深く、小寒い日でしたが、風は弱くうす日がさしておりました。北に崖のある砂浜には既に会社員らしい若い人のグループが七、八人、先生と思われる人と共に油で岩と灯台を描いております」
三浦半島の風景の秋から冬にかけての澄み渡った青い空。一番素敵な季節をひときわ美しく描いています。



制作日は十一月十七日、場所世田谷区蘆花恒春園、ここは東京の西南十五キロ、手近な写生地として画人に、また文豪蘆花の居宅として文人に親しまれた所」「よく昔ながらの武蔵野の俤が保存されています」
点描のような柿の実が枯れた秋景色に生き生きとした喜びを表しているようです。








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